漆器  

漆器

漆器(しっき)とは、日本産ほか東アジア特産の漆(うるし)の木から採取した樹液を天然樹脂塗料(主成分はウルシオール)として、木や紙の素地に塗り重ねて作る美しい工芸品です。伝統的な素地は木ですが、近年はプラスチック(合成樹脂)の素地などが多くなっています。

堅牢な漆器は熱に強く、熱い料理を盛っても掌に温を通しません。
しかも酸・アルカリにも強く、食器として優れた性質を持ちます。
この特性を充分に活かせる器は「椀」です。

掌に熱さを伝えない木地塗り重ね漆器は「椀」が最適。これは陶磁器製の碗が本来はこの用途に向いていないという意味にもなります。



漆器 山田平安堂 お椀

漆器のうつわ

漆器の見分け方

漆器の色

漆器の仕上げ塗りには大きく分けて磨きの工程がない【塗り立て仕上げ(塗り放し)】と、磨き上げて艶を出す【ろいろ仕上げ】があります。下で紹介する塗りは主に塗り立て仕上げになります。

真塗(しんぬり)

漆器で最高の塗りとされる黒の塗り放し漆器。

溜塗(ためぬり)

やや褐色の透明な漆を塗って下塗りの色を見せたもの

朱塗(しゅぬり)

文字通り朱漆を上塗りしたもの

潤塗(うるみぬり)

うるみ漆(朱漆・弁柄漆・黒漆を混合)を仕上げ塗りしたもの

☆その他の塗り
白檀塗】→ 中塗りに箔を貼り透明の漆で仕上げる。褐色系。
【一閑塗・一閑張(一貫張)】→ 和紙素材に塗る
【布目塗・布張塗】→ 麻布に塗る
絞漆系の【摺漆】【叩き塗】【刷毛目塗】


漆器の装飾

蒔絵
蒔絵(まきえ)は、非常に古くからある日本独自の伝統的加飾技法。漆器に絵柄を手書きし、乾かないうちに金銀を蒔いて定着させる。現代は手書きではなくシルクスクリーンを用いて下絵を施すことで大量生産が可能になっている。蒔絵には【高蒔絵】【平蒔絵】【研出蒔絵】などの手法があります。

蒔絵

沈金
沈金(ちんきん)は漆器に絵柄を彫り、そこに金粉や金箔(又は銀)を埋め込む。輪島でよく使われる加飾技法。

沈金

螺鈿(らでん)
螺は貝、鈿は散りばめるの意。
漆器の素地に彫刻を施し、そこに青貝・夜光貝・白、黒蝶貝・アワビ・アコヤガイ等の殻の内側の虹色部分を切り出してはめ込む。蒔絵と合わせて加飾される例が多い。

螺鈿

その他の漆器加飾法
【彫漆】、【平文】、【漆絵】、【箔絵】、【蒟醤】、琉球漆器で用いられる【堆錦】など。

漆器の生産地

漆器は北陸産があまりにも有名ですが、全国各地で製造されています。 全部を紹介しきれませんので、ここでは代表的なものを取り上げます。

根来塗

黒漆の下塗りに朱漆塗りを施す根来塗(ねごろぬり)の技法は日本の漆器全ての原点とされ、「根来塗」で基礎が固まったと云われます。
紀伊国根来寺(和歌山県岩出市)は室町時代に隆盛を極め、僧は6000人近く、領地72万石、寺院数2700以上だったとか。この新義真言宗の僧徒たちが寺内で使用するために製作した漆器が朱漆器であったと伝えられております。
これが広く伝わり、後世には朱漆器を「根来塗」と呼ぶようになったとか。しかしこの隆盛も豊臣秀吉の根来攻めで消滅。僧たちは各地に逃れ、会津、薩摩そして能登の輪島へも。各地で根来塗を伝えたとの事。


根来塗 汁椀


春慶塗

春慶塗(しゅんけいぬり)は岐阜県高山市の「飛騨春慶」を筆頭に各地にある。
特に、秋田県能代市の「能代春慶」、茨城県東茨城郡城里町の「粟野春慶等」が有名。
天然木(飛騨春慶は栃・檜・椹)の木地にベンガラや梔子で色付けした後豆汁を塗ってから透明の漆を塗って仕上げる。これによって木目が際立って美しく見える。なので、板物(盆等)、曲物(菓子箱、重箱等)によく施される。


春慶塗 三段重


輪島塗

漆器に関心がない人でも「輪島塗」の名称は知っている程有名。
日本人なら誰でも「塗り」と言えば輪島塗を頭に浮かべるくらいです。
木地師が厚めに作った欅(けやき)の木地に、塗師が「地の粉」(珪藻土〈粘土〉を焼いて粉にしたもの)と米糊を生漆に混ぜた塗料を何層にも何層にも塗り重ねることで、頑丈さと光沢を出している高級漆器です。蒔絵や沈金を施してあるものは完成まで実に100を超える工程があり、堅牢さと美しさ、重厚感は他の追随を許しません。


輪島塗 切手盆 切手盆とは


山中漆器

山中塗は別名「山中温泉漆器」
石川県加賀市の山中温泉地区で作られているからです。
最近は合成樹脂の漆器が大量に生産されて全国一の出荷量。
伝統的な山中塗は「ろくろ挽き物技術」・「加飾挽きの技術」で天然木の木目を美しく引き出した造作。「拭きうるし仕上げ」で豪快に木目を出しています。


山中漆器


会津漆器

福島県会津若松市内の門田地区には漆器団地がある。 山中漆器の前には生産量全国一だったほど漆器が盛んな地。 伝統技術と新技術の狭間で揺れ動き、時代と戦っているように感じる。


会津塗


紀州漆器

紀州漆器は「黒江塗」と呼ばれることもあり、和歌山県海南市黒江が主産地。紀州漆器は紀州桧を描いたものが始まりだとされます。石川や福島と並んで漆器製造が多く有名。


紀州漆器


川連漆器

川連漆器(かわつらしっき)は秋田県湯沢市川連町で作られる。
下地に柿渋と生漆を直接塗っては研いで塗る工程を繰り返す「地塗り」によって独特の色合いを出している。頑丈であり、一般の器の他仏具にもよく使われており「秋田仏壇」は有名。装身具にもよく使われる。


川連漆器


漆器は日本料理の器として、またあらゆる生活用品・装飾品として、縄文時代まで遡る事ができる非常に歴史のある日本の代表的な「歴史的工芸品」でもあります。中国を始めとして東アジアの各地で漆工芸は行われておりますが、漆器そのものは日本固有の工芸という認識が世界的であり、欧米では漆器を「JAPAN」と呼びます。

漆器の特徴を単純化すれば二点

圧倒的な「美」
それを支える「頑丈さ」

これが日本の伝統技術である事。
それは
中世的なサムライ鎖国社会から僅かの期間で欧米に追いつき近代化したこと。
太平洋戦争の焼け野原からたったの数十年で経済大国になったこと。
こうした「日本の奇跡」といえる現象に関係が深いと思います。
日本には類稀なる「もの作り技術」と「美的感覚」があるのです。
しかし
「もの作り」を忘れ、後世に残す努力が薄れている現代の日本。
大切なものを忘れた国に果たしていかなる未来が待っているのか。
漆器はそういう事さえ感じさせてくれます。

「良いものは非常に手間がかかる」
「だが高値でも売れる。それだけの価値があるから」
今の日本が思い出すべき事ではないでしょうか。

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