マル国家③

ジャ-ナリストMの手記より

2○○×年
私企業の研究開発施設と生産工場があった無人島が
国際社会の承認を得て独立国になった

その島の面積はほぼ東京山手線内と同じくらい
元々これの20分の1しかない無人島であったが
人工的に現在の大きさに拡張された

位置は太平洋の赤道の上
この場所でなければいけない理由があり
それは後に説明する

高さ2千メートルを越える巨大なビルが七つ聳え
それを取り巻く蜘蛛の巣状のパイプラインが
大小無数にそれらを有機的につないでいる
その姿は遠望には幾何学的でもある

島は本島と地底交通で繋がる海底道を経て
離島が二つある

一つは一辺が数百mはあろうかという
巨大なチーズケーキを思わせる黒い建物が数十見える
その合間に運河様の幅100mはありそうな川が
両端を海と接している

運河をまたぐ様に逆凹型の黒い建造物があり
巨大な貨物船が海から直接運河に入り
この構造物を通過する様に出来ている
沖合いには巨大船が沢山順番待ちの様子

貨物船は世界各国からゴミを満載してここに来る
そのゴミとは処理不可能な「やっかいもの」達である
核を含む人間が生み出して処理に困っている廃棄物群

この施設が生まれるのがあと50年後であったなら
確実に人類は地球を人の住めない星にしていただろう

満載された「荷」は
運河の構造物を通過したあと 消滅 している
物質が消える事などあり得ないので
原子素粒子あたりに 分解 でもしているのか

話によれば
この始末におえぬ ゴミ を
分子構造を変換して再資源化しているらしい
近くに立ち並ぶ巨大な黒い 「箱」 は
その工場群なのであろう

もう一つの島は 真っ白な平坦地である
滑走路のような白い平地
しかし飛行機の滑走路にしては平面があまりにも広い
所々にドーム型の建造物があり
これは半地下型の建物であろう
おそらく地下に巨大な施設があると思われる

驚きはこの島の中央付近に立つ塔である
半径数十メートルのその塔は
上が見えないのである
雲を突き抜けてしまい高さの見当がつかない

この構造物こそが
この国が赤道のこの場所になければならない理由だ

高さはおよそ15~6万キロメートル
つまり天頂は宇宙空間にある
この史上最大の建造物が
自重で崩壊しない理由もそれである

この建物の中心は高さ3万6千キロにあり
それは重力と遠心力がつり合う地点
周期もちょうど24時間
だから重さは相殺され動く事もない

それが静止軌道なのである
内部には「エレベータ」が存在し
人と貨物を移動させている
上下に移動する事で位置エネルギーを蓄えられるから
消費エネルギーは ゼロ である
宇宙空間に出る方法でこれ以上のシステムは存在するまい
ツィオルコフスキーとアルツターノフとクラークの夢
『軌道エレベータ』が目の前にあるのである

本島の都市部に戻る

巨大ビルの中で一際目を引く建物
内部面積が想像できないほど大きい
いったい何万何十万の人が収容できるのか

外国人が自由に過ごせる唯一の場所でもある
『テロメック・タワー』と呼ばれる

ありとあらゆる 病 を完治させることが可能で
この国は世界中の人にここを 無料 で提供している

ゴミの処理や先端技術や核融合エネルギーは有料で
世界に 販売 している金満国家であるが
生命工学というか延命技術は無料というわけである

有料にすれば
金持ちしか治療できなくなる可能性が出るからであろう

それは
世界中の病人が選択される方法や
この国への渡航費滞在費を含めて無料であること
それらの基準から伺う事ができる

その治療レベルとは
あろうことか ほぼ死んだ人 を健常者にしてしまう域なのだ

植物人間でも脳細胞が生きていればよいらしい
精神を一度ダウンロードしておき
体細胞からはヒトゲノムのみ基本遺伝子のみ抽出
あとは新しい肉体を培養し
その肉体に精神と浄化した遺伝情報を戻す

この治療を受けた病人は
150歳まで寿命が延びると言われる

しかしこの国の国民は
寿命が200とも300歳とも噂され
実質的に自然死は無いともいわれている

それはこの国の人の大半が太陽系内各地
つまり宇宙空間で仕事をしているから
そのような長命が必要であるらしい

そして・・・・・

2006年マル子

コメント

タイトルとURLをコピーしました